ブルー・ロータス(第7回)
「この世で、最も美しい花・・・」
女は青年の言葉をくりかえした。太刀を失った男は、短く嘆息した。どうやら、女を殺めるのを諦めたようであった。威嚇を続けるイヌワシの横を通り過ぎると、縁側に腰を下ろした。
「止むを得んな」
とだけ言うと、鎧を草叢に脱ぎ捨てた。
女は安堵した。男の様子を見て小さく笑むと、青年の隣に座った。イヌワシも威嚇を止めると、青年の側にその身を置いた。
気が付くと、いつの間にか雨は上がっていた。雨音はやがて虫の声にとって変わった。漆黒の闇が、紺青に緩やかに移ろっていき、彼方の山の端が白むのが見えた。
もうすぐ、夜が明ける。
池にはあちこちに睡蓮の蕾があった。
三人と一羽は、ただその様子を眺めていた。
(続く)
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